17 聞き方の基本
-自分が話すよりも、簡単で楽しい?-
チェックポイント
①「話し上手は聞き上手」は真実
②4つの「聞き方のコツ」を押さえる
③気持ちよく話してもらい、真意を知る
会話は「話す」より、「聞く」が大切
よく「話し上手は聞き上手」といわれます。コミュニケーションにおいて「聞く」という行為は、それだけ大切だからです。
相手の要望を正確に把握して、それに応えていくことは、社会人にとって求められる能力です。このプロセスで「聞く」ことは重要となります。会話中に相手のニーズを聞き出すことで、要望に応える努力もできます。「聞く力」は「相手に気持ちよく話してもらえる力」でもあるのです。
▶「聞き上手」いになるコツは4つ
あなたが「興味を持って聞いています」と態度で示せば、相手は気持ちよく話してくれます。そのためには、次の4点を重視します。
●視線
●うなずき・あいづち
●表情と態度
●最後まで聞く
●視線
話しを聞いていることを視線で伝えます。言い替えれば、意識的に話し手に視線を向けることです。
ただし、ずっと話し手の目を見続けていると、お互いに疲れてしまいます。基本的には視線を合わせつつも、ときどき鼻のあたりに視線を外しながら聞くといいでしょう。
●うなずき・あいづち
あなたが無反応で話を聞いていたら、相手は「興味がないのか」「つまらないのか」「何か失礼なことを言ってしまったのか」と不安になります。話すことが苦痛になってしまうのです。
会話に興味があることを伝えるためには「うなずき」が簡単で効果的な主張です。首を縦に振るだけで、相手は話しやすくなります。
うなずきに、その場の状況にあった短い言葉をプラスすると、「あいづち」になります。言葉も加わったあいづちが入ることで、会話にテンポが生まれます。相手はさらに話しやすくなります。
もちろん「はいはい」「はぁ」「ふーん」といった気のないあいづちでは、かえって話しの邪魔になりますから、注意が必要です。
●表情と態度
話を聞くときは、相手の気持ちに添った「表情」と「態度」を心がけましょう。楽しい話題は笑顔で、悲しい話にはその内容にふさわしい表情にします。
話し手にとっては無表情ほど、怖いものはありません。あなたが表情豊かに聞いていれば、「話を聞いてもらっている」と安心できます。うなずきやあいづちと組み合わせると、さらにいいでしょう。
たまにまじめに聞いているうちに、怖い表情になって伊舞う人がいます。本人に悪気はないのでしょうが、話し手を不安にしてしまいます。思い当たる節があれば、柔和な表情を心がけましょう。
●最後まで聞く
気持ちよく話してもらうためには、途中で遮ったり、話に割り込まないことも大切。話し手は気分を害してしまいます。
相手に質問をしたいとき、相手が会話を終えたタイミングで「あの・・・・・・」と言いかけたら、相手も話しの続きを言おうとしていた、と言う場面があります。割り込んだわけではないのですが、お互いに気まずいものです。
こうした場面を避けることは、会話が途切れたからと言って、すぐには質問しないこと。最低でも3秒は間を空けましょう。
▶相手の話を正確に聞き取る
相手に気持ちよく話してもらえるようになったら、つぎは「正確に聞き取ること」うぃ意識します。相手のニーズを正しく把握することで、新しいアイデアや解決策を提示することができます。
●メモを取りながら聞く
●相手を観察する
●質問をする
この3つを押さえることで、相手の話を正確に聞き取れます。
●メモを取りながら聞く
メモを取ることには2つの効果が期待できます。
まずはメモを取る鼓動そのものが「あなたの話は重要です」「真剣に聞いています」「大切なことは書き留めていますよ」といったアピールにつながることです。わざわざ言葉に出さなくてもいいわけです。
話の内容が文字として残ることで、話し手はいい加減なことを口にできなくなります。自分の話に、責任を持つようになるのです。
メモを取る2つ目の効果は、情報としての正確さです。
記憶は時間とともに薄れていってしまします。話の内容を覚えていたつもりでも、うっかり忘れてしまうことはめずらしくありません。
こうしたミスを防ぐためにも、メモに残すことが重要です。話しの行き違いや、「言った」「言わない」などのトラブルも防げます。
メモの取り方は「5W3H」を意識してください。後日確認するときに、聞き忘れた箇所や疑問点がすぐにわかります。
・Who・・・・・・誰が・誰に
・Why・・・・・・なぜ
・What・・・・・・何を
・When・・・・・・いつ
・Where・・・・・・どこで
・How・・・・・・どのように
・How many・・・・・・いくつ
・How much・・・・・・いくらで
●相手を観察する
正確に話を聞くためには、言葉そのものだけではなく、話し手の表情や態度、声の調子なども重要です。言葉以外のコミュニケーションである「ノンバーバルコミュニケーション」にも意識を向けて、判断することが重要です。
話し手が「申し訳ございません」と口にした場合でも、本心からどう思っているのか、うわべだけの謝罪にすぎないのかは、表情や態度、言い方などから伝わってきます。
言葉を聞くことだけに集中していると、こうした情報を見逃してしまいます。会話中は耳だけでなく、目も活用しましょう。言葉以外の情報も交えて判断することが、正確に聞き取るためには大切です。
●質問をする
相手に話を続けてもらうためにも、知りたい情報を引き出すためにも、質問は有効な手段です。質問をすることには、次のような効果があります。
・わからないことを教えてもらえる
・確認できる
・話のきっかけづくり
・相手に気持ちよく話してもらえる
・話しを広げ、深めることができる
私たちは日常生活において、他人に質問することがよくあります。その全てで、知りたいことやわからないことがあるわけではありません。コミュニケーションのきっかけとして、質問している場合も多いのです。
質問には大きな力があります。その場の状況と、目的にあった質問の仕方をマスターし、適切に使い分けましょう。
▶「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」
質問は大きく分けて、2種類あるといわれています。それが「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」です。
●クローズドクエスチョン
・朝食はパンですか?
・牛乳はお好きですか?
・合計1万円で間違いないですか?
これらの質問はどれも「はい」か「いいえ」で答えられます。話しに広がりを持ちませんから、「クローズド(閉じた)」の質問というわけです。
話しを広げづらいクローズドクエスチョンは、日常生活のコミュニケーションには向いていません。
たとえば「学校に行っていたの?」とたずねても、返答は「はい」か「いいえ」で終わってしまいます。会話のきっかけとしての質問では、後述する「オープンクエスチョン」のほうが適しています。とはいえ、ビジネスシーンでは異なります。クローズドクエスチョンがふさわしい場面も少なくありません。
なぜなら、ビジネスでは小さな行き違いやミスが、大きなトラブルに発展することがあるからです。曖昧な返答では困るのです。
そこでクローズドクエスチョンを投げかけて、明確な答えを求めます。そうすることでトラブルを未然に防ぐことができるのです。
会議や打ち合わせの終了時、必ずこのクローズドクエスチョンで、お互いに認識を確認し合いましょう。
人の名前、商品の名前、金額、数量、日程。これらについて、「はい」か「いいえ」で答えられる質問を入れながら事実確認をすることで、小さなミスや行き違いを防げるのです。
●オープンクエスチョン
こちらは「オープン(開いた)」の質問です。回答が「はい」「いいえ」に限定されないため、返答の自由度が高くなります。
・朝食は何を召し上がりますか?
・飲み物はなにがお好きですか?
・お休みの日はどのように過ごしていらっしゃいますか?
オープンクエスチョンによって、話しは広がりやすくなります。コミュニケーションのきっかけや、わからないことを深く知りたいときに有効です。
返答がわかっていることでも、あえてオープンクエスチョンを投げかけるテクニックもあります。
話し手がうれしそうに、トラブルを乗り越えた話をしていたとします。ここであなたが「いろいろご苦労があったのでは?」と問いかけたら、話し手は「そうなんだよ!」とさらに饒舌になるでしょう。
オープンクエスチョンには、会話の潤滑油としての役割もあります。相手が話しやすい表情、声のトーンまで意識すると良いでしょう。
▶質問の持つ「大きな力」を自覚する
個の用に質問は、大きな力を持っています。特も悪くも相手に影響を与えてしまうのです。
知りたいことがあるからといって、矢継ぎ早にたたみかけるようにたずねていると、「尋問」や「詰問」と受け取られてしまいます。攻められているように感じた相手には、不快感や不満が残ります。
質問は、相手がいるから出来ること。相手が話してくれなければ、何も聞くことが出来ません。相手への配慮、すなわちマナーの心を欠かさないことが大切です。